名古屋城天守閣が、木造で再現されることになったそうです。
いや?、澤田としてもこれ以上嬉しいニュースはありませんよ。そもそも私は、城郭という伝統建築物を鉄筋コンクリートで造ることに違和感というか不満を抱いていた人間です。コンクリの城なんて「城」とは言えません。ただのモニュメントです。別に大坂城に喧嘩を売るわけではないのですが、和式城郭と寺社仏閣が日本独特の建築技術のベースになったということは誰も異論はないでしょう。
だったら、その復元も極力オリジナルに忠実であるべきです。
そこで今回は「名古屋城天守閣木造復元決定おめでとう企画記事」として(長いタイトルだな)、生まれ変わる城郭の今後を占っていきたいと思います。
木造にしたらこんなにいいことが!
中日新聞の記事によると、名古屋城木造復元に対しては6割の市民が賛成しているそうです。
一時期言われていた「支持率2割弱」というのは、あくまでも河村たかし市長の早期復元案に対する数字で、「東京オリンピックに間に合わなくてもいいから」と考えている市民は非常に多いとのことです。
澤田も、天守閣木造復元計画をオリンピックと無理やり結びつける必要はないと考えています。それよりも安普請にならないように、じっくり計画を練って事に当たってほしいわけです。
では、天守閣を木造にしてどのようなメリットがあるのか? ここでまとめてみましょう。
①何だかんだで寿命が長い!
一般的な木造家屋はともかく、そうではない伝統建築の場合は数百年というスパンで受け継がれます。木で造った建物は、非常に丈夫です。
鉄筋コンクリの天守閣は、わずか半世紀でボロボロになってしまいました。日本では「鉄筋コンクリの建物は50年が限度」と言われていますが、名古屋城もその例に漏れませんでした。
鉄筋コンクリの意外な短寿命を知って、ガッカリした歴史ファンも多いはず。それならば木造で建てようじゃないか、と考えるのは至って自然ではないでしょうか。
②伝統技術が継承される
日本は「木の国」です。伝統建築物のほとんどは木材でできています。
ですから「技術の継承」という面から見れば、定期的に大きな木造建築物をこしらえる必要があります。こういうことを言うと「澤田は森林伐採を認めるのか!」と返されてしまうのですが、樹齢数百年クラスの木を切りたくないというのならもっと細い木を集めて集成材を作るという手段があります。
このあたり、私は大工ではないので何とも言えないのですが、強度の問題さえクリアすれば一本無垢の材木にこだわる必要はないと思います。先ほど「伝統建築物はオリジナルに忠実であるべき」と書きましたが、だからといって改良や現代技術の応用を否定してはいけません。
それに、「城や寺社を木造で建てることが過度な森林伐採を推し進める」という論調は、かなり単眼的で話が飛躍してると思うのですがいかがでしょうか。
③木は経年変化が美しい
実は私は、平等院鳳凰堂の「平成の大改修」の内容に反対していました。今でもあれはやるべきじゃなかったと思ってます。
木と革は、時間が経てば経つほど味が出てきます。いわゆる「侘び寂び」ですね。経年変化による風情があってこその伝統建築で、木造名古屋城も数百年後は確実にそうなります。
数世紀というスパンで物事を見ることにより、初めて木造で再建した意義が見えてくるわけです。逆に鳳凰堂は、それを無にしてしまったと感じざるを得ません。
以上、「名古屋城天守閣を木造にするメリット」を澤田なりに列挙してみました。
もう一つ言わせてもらうと、この天守閣が完成したら今まで以上に維持管理が慎重になってくると思います。木造建築物の最大の敵は、火災とシロアリです。これらをどうセーブするかが、今後の課題となってくるでしょう。
ともあれ、歴史ファンにとってはこのニュースは今年最大級の吉報のはず。澤田は天守閣が完成する頃にはもしかしたら野垂れ死んでいるかもしれませんが、その時はその時であの世から金の鯱を眺めさせてもらいます。
ですがその前に、もう一度コンクリ建ての旧天守閣を取材しに行きたいとも考えています。乞うご期待。