春になると「今年の夏は冷夏となる傾向にあります」という予報出され、
夏が過ぎると「今年の冬は平年より気温が低く厳しい寒さが続く」などこれからの季節の予報を耳にします。
いわゆる「3ヶ月予報」と呼ばれるものですが、実際にその季節が訪れ、うだるような猛暑なら「誰だよ冷夏とか言ったの」と汗だくで恨み節を唱え、暖冬なら「寒くなるって言ってたじゃん!」と憤りを感じるのもまた「3ヶ月予報」ならではの特徴ですね。
気象庁が出す「3ヶ月予報」とは一体どのようなものなのでしょうか?
目次
「天気予報」と「季節予報」の違い
翌日~一週間後ぐらいの1日単位の「天気」を予報する事を「天気予報」と言いますが、一週間以上となると移動性の低気圧や高気圧の動きを予測する事が困難となるため「季節予報」と言われる一週間や一カ月の天気を平均化した「気候」の予報を出します。
「天気予報」なら「○日は晴天」「○日は雨」など、はっきりとした天気の予報を出せますが、「季節予報」となると予測が不確実なため「今後一カ月の気温が例年より低い確立は50%となります」というような確率表現という方法を用いて予報を出します。
「天気予報」が都道府県市町村別まで細かい予報が出せる事に対して、季節予報は北海道、東北、関東など地方ごとでの予報しか出せないという違いもあります。
気象庁の3ヶ月予報の出し方
気象庁の3ヶ月予報とはどのように予測しているのでしょうか?
世界中の大気の流れ、海面の水温、陸面の水分や温度などを数式化、数値化モデルにしたものに現在のデータを入力して積分化する手法を用いており、不確実性に対処するため3例以上の計算を行い、その結果から予報を作成しています。
これを「アンサンブル予報」といい、とんでもなく膨大な計算量なのでスーパーコンピュータを導入して予報精度が上がるようあらゆるデータを参考にして予報を出しています。
あのスパコンで計算しているのに梅雨予報が外れたり冷夏予報が外れたり暖冬予報が外れたりするのは一体何故なのでしょうか?
その理由の一つして北半球の寒気が挙げられています。北半球の規模が強い寒気は突発的な事態も多くて予想が難しいのが現状です。
都心部に豪雪が降ったりスキー場に雪がなかったりするのも寒気の影響が大きいと言われています。それらの状況も踏まえて予測精度を向上させることが3ヶ月予報の今後の課題のようです。
気象庁が3ヶ月予報を出す理由
どんなにデータを入力しても、計算パターンを増やしても、スパコンを駆使しても結局のところ当たらなければ「ちくしょー、3ヶ月予報なんていらねーじゃん!」と思われてしまうのも致し方のない事でしょう。しかし世の中には3ヶ月予報を必要としている人もいます。
例えば家電メーカーの場合、当たっても外れても3ヶ月予報で出た気象データを元に冷暖房器具の需要などの参考にしています。飲料メーカーも夏寒く冬暖かければ飲料が売れないので、万が一の為の対応ができます。そして一番必要としているのが「農業」です。
作物は暑さ寒さの影響をダイレクトに受けます。特に長い時間かけて実る果物や稲などは、3ヶ月予報を見てある程度の対策を練らないとなりません。また気象条件によって発生する害虫や病気などもあるので、JAなどでも3ヶ月予報の情報を積極的に提供をしている地域もあります。
一般人にとっては「当たっても外れても特に影響ない」3ヶ月予報でも、業種によってはスパコンで算出する価値のある貴重な情報源でもあるのですね。今後の研究で精度が上がりますように…!