こんにちは。亜具蓮将(あぐれんしょう)です。
9月28日、マッチ事業最大手の兼松日産農林が国内最大規模の製造設備を持つ淡路工場(兵庫県淡路市)を閉鎖したうえ、事業から撤退する方針を示し、衝撃が広がっています。
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設備の老朽化や需要不足で決断
これは淡路工場に設置されている自動マッチ製造機が老朽化し、故障を連発するようになり安定生産が難しくなっていることやライターの普及で需要が著しく低下していることなどから、今回の決断に踏み切ったもの。
現在兼松日産農林を含めて4社が自動製造機によるマッチ生産を行っていますが、出回っている機械の修理部品が存在せず、製造メーカーも存在していないため「壊れたら終わり」の状態が続いているそう。
最大手企業が撤退したことで、「負の連鎖」が発生する可能性も否定できず、日本製のマッチが消滅する危機に瀕することになりそうです。
戦前の日本を支えた功労者
人間の生活にとって、「火」は欠かすことは出来ません。火を通すことで様々な食材を調理し、栄養をとることができるわけですから、命の源と言っても過言ではないでしょう。
日本は明治時代まで火をおこす際には火打ち石などを使っていました。想像ですが、一般人が使いこなすには、大変な技術が必要だったものと思われます。マッチの登場で格段に火をおこしやすくなったことは、言うまでもありませんね。
そんなマッチを日本に定着させたのが、金沢藩士の清水誠。明治3年にヨーロッパに留学し製造のノウハウをマスターすると、日本に戻りマッチの製造と販売を手がける「新燧社」を設立します。
新燧社の製造するマッチは高い評価を得るようになり、あっという間に普及。さらに輸出品として重宝されるようになり、日本の経済を支える存在になります。
一時安価な粗悪品が出て評価を落としましたが、兵庫県燐寸製造組合を作り悪徳会社を淘汰。市民の大事な火を提供するマッチはなくてはならないものとなりました。
ライターの出現で存在が低下するも…
昭和に入っても重宝されてきたマッチですが、ライターの出現でその存在が脅かされるようになります。
平成に入るとマッチは段々と衰退。最近はマッチの使い方がわからないという若者も多くなっているほか、一本使い捨ての精神がエコではない、火事につながりやすいとの声があり、その存在感が薄れているのです。
しかし、昨今のライターは「子供に火をつけさせない」との観点からレバーを重くするものが主流となってきており、力の弱い女性やお年寄りが火をつけにくくなっています。
そのような環境下で力を使わずコツを掴まないと火をつけることができないマッチが見直されつつあり「まだまだ捨てたものではない」という評価も根強くあります。
兼松日産農林のマッチ事業撤退は残念ですが、日本の文化を守る意味でも、残された企業には製造を続けてほしいものですね。