こんにちは。夏に上がった花火を、こたつで楽しんでいるオコシです。
先日、花火愛好家の「ph0enix2011」こと安斎幸裕さんに取材させていただいて、花火の動画には、映画やミュージックビデオに負けないエンタテインメントがあると気づかされました(前回インタビュー「花火嫌いをマニアに変えた衝撃とは」はこちら)。
安斎さんは名だたる花火大会の動画を撮影し、YouTubeで公開しています。中でも選りすぐりの動画をお聞きしました。今回も、マニアトーク全開ですよ!
※2016年版 千葉県の花火大会の日程一覧を網羅!おすすめスポット情報も!
目次
マニアの胸を震わせた名プログラムの数々
オコシ:安斎さんの花火動画は数分のプログラムごとに公開されていますよね??
安斎:花火大会って、だいたい1時間~2時間くらいで開催されますが、ひとつの大会は、実はいくつかのプログラムが集まって構成されているんです。
それぞれのプログラムには、音と光のドラマがあり、花火師の技があり、携わる人たちの思いがあります。
オコシ:花火大会が紹介されることは多いですが、花火がプログラム単位で注目されることってあまりないように思います。ぜひ、2015年に安斎さんの心に残ったプログラムを、動画とともに振り返ってください!!
安斎:お任せ下さい! 私が2015年観た各花火大会の中で、「心にジーンと来た感動の花火プログラムBEST5」をご紹介させて頂きます! あっ、花火動画をご覧になるときは、スマホやPCでも、できればヘッドフォンを付けてください。私の動画は、音の再現に自信があるもので!
1.赤川花火大会2015 オープニングスターマイン
オコシ:オープニングのプログラムは特別なものですよね。
安斎:その年の大会のスケール感や方向性が示されるので、特に期待が集まりますね。特に2015年の赤川花火大会は25周年の記念大会で、マニアの期待感はMAXでした。
しかも、私が大好きな伊那火工堀内煙火店さんが、オープニングを担当する! それはもう3日前から眠れずに、会場に向かいました(笑)
オコシ:おおっ! ここに挙げていただいたということは、期待を上回る内容だったということですね。
安斎:はい、はるかに。 例年、赤川花火大会のオープニングは打ち上げ幅約数百メートルのワイドスターマインで始まるのですが、今年の打ち上げ幅は、例年の2倍以上!?(幅=花火を複数打ち上げる場合の左右の幅。長いほどワイドなスクリーンで迫力ある花火になる)
しかも、開花時の直径が500mにもなる「正二尺玉」も組み込まれていました。
例年以上のスケールで、しかも音楽と花火が完璧にシンクロしています。ゾクゾクっと震え、自然と涙が出てきました。
オコシ:私のようなシロウトは、動画のどのあたりを注目するとよいのでしょうか?
安斎:今年は、三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I」に合わせて、花火が打ち上げられました。1:18~最初のサビ部分は必見です。「人生一度きり DREAM 掴みたいから今…♪」のところで、花火が完璧にシンクロしているのがわかります。
3:35~の間奏では、花火が徐々に左右に広がり、その後の盛り上がりを期待させます。ちょうど4:03あたりで特大の「正二尺玉」が打ち上がり、ボルテージは一気に最高潮へ。実はあまりにもワイドすぎてカメラに収められませんでした(笑)
オコシ:画面から花火がはみ出しているところにも、スケール感を感じてしまいます。
2.長岡まつり大花火大会2015 天地人花火
安斎:日本一の花火師と呼び声高い野村花火工業さんが担当しています。とにかく精度が高く、非の打ち所がありませんね。
オコシ:安斎さんは、花火のどんなところを評価されているのでしょう?
安斎:こういったミュージックスターマインの場合、「音楽にシンクロして打ち上げられているか」「夜空のキャンパスを上手く利用し、絵が描けているか(小型煙火・小玉・中玉・大玉の打ち上げバランスや左右の広がり)」の2点を重視しています。
まあ、今はコンピューター制御による自動点火で打ち上げられるので、ミュージックスターマイン(音楽シンクロ花火)はかなり一般的になりました。
しかし、「空間を上手く利用した打ち上げバランス」(後者)は花火師さんの腕や考えによって大きく左右されます。天地人花火はまさにこのあたりが秀逸なのです。
“野村花火工業のミュージックスターマイン「故郷はひとつ」。撮影:orangealice100さん。ご本人の花火動画はこちらのチャンネルで”
オコシ:曲のせいか、戦国武将のような勇ましさを感じました。見どころを教えていただくと?
安斎:0:50に、尺玉(開花幅:約300m)の対打(2箇所から同時に打ち上げる)があります。このプログラムでは、毎年ここで必ず対打が入ります。
しかも「芯入り」と呼ばれる花火で、何重にも輪が広がったように開きます。とても難易度の高い玉です。
さらに野村花火工業さんはこの部分に「四重芯」(親星に芯が4重、計5重芯の花火)という、芯入りの中でも非常に高難度な玉を打ち上げているのです。
色とりどりの芯が、何重にも広がりはっきりと写し出されています。「美しすぎる……」の一言です。
“いばらきまつりで打ち上げられた野村花火工業の四重芯。撮影:orangealice100さん”
「野村四重芯」と呼ばれるくらい、野村花火工業さんが製作する四重芯には魅せられるものがあります。このあたりの完璧な仕事が、「野村花火工業」が日本一の花火師と言われる所以です。
オコシ:「堂々たる」といった印象です。まだまだ続きますよね?
安斎:もちろんですよー。クライマックスは2:33ごろからです。千輪(一度花火が開いた音がしたあとすぐには光らず、時間差で小さな花火が一斉に開く)が咲き乱れ、さらに虎の尾(地上から広がる太い花火の柱)がいくつも打ち上がります。他では見ることのできない構成です。
余談ですが、この天地人花火オープニング曲、私の結婚式の乾杯の音楽にも使用しました(笑)
3.赤川花火大会2015 希望の光
オコシ:またまた赤川ですね。
安斎:「伊那火工堀内煙火店」さんが打ち上げを担当し、幅約700mのワイドな打ち上げに、「正二尺玉」(開花幅:500m)も5発入りました。
オコシ:オープニングスターマインとは打って変わってスローなテンポですね。
安斎:見どころは何と言っても、「正二尺玉」です。未来への希望の光を花火で演出するプログラムで、「未来へ訴えかける・未来へ届ける」というコンセプト。Salyuさんと櫻井和寿さんの「to U」に合わせ、ゆったりと打ち上げる。そして堂々と魅せる。
このプログラムは全体で約4:30の構成ですが、序盤はゆったりと、本当に静かにはじまります。
本格的に盛り上がる部分は2:50過ぎからです。Vトラ(虎の尾がV字に打ち上がる)が、最大約700mまでだんたんと幅を広げて打ち上げられていきます。3:15あたりでは1発目の正二尺玉が打ち上がります。この正二尺玉がまさに未来への希望の光なのです。
“「希望の光」の正二尺玉&Vトラ。撮影:orangealice100さん”
このあと正二尺玉の対打が2回、合計5発の正二尺玉が打ち上がります。
V虎と正二尺玉の迫力を、ぜひ堪能してください。V虎と正二尺玉の「打上音」も独特の図太さがあります。
4.長野えびす講煙火大会2015 ミュージックスターマイン
オコシ:めずらしい11月の花火大会ですね。とれたて動画です!
安斎:野村花火工業さんと並んで、日本で一、二を争うと言われる紅屋青木煙火店さん、信州煙火店さんが打ち上げを担当しています。今年は約7分にわたり、音楽シンクロ花火「ミュージックスターマイン」が披露されました。特に紅屋青木煙火店さんが打ち上げた剣の舞と花火のコラボは素晴らしいの一言。
紅屋青木煙火店さんのパートは、動画の3:48からスタートしますよ。
オコシ:これはまた凄いスピード感です! 安斎さんが撮影した花火動画の中でも、めずらしいパターンなのではないでしょうか。
安斎:ミュージックスターマインは、バラードが使われることが多いのですが、これだけアップテンポの曲で完璧に打ち上げられるのは、紅屋青木煙火店さんくらいでしょう。マニアでなくても感動ものではないかと思っています。
5.長岡まつり大花火大会2015 復興祈願花火・フェニックス11
オコシ:最後も長岡からです。これはすごい迫力です!!
安斎:中越地震で被災した長岡市。その復興を祈願して始まったのが「フェニックス花火」です。花火大会ではお馴染み、平原綾香さんの「Jupiter」に合わせ、約2kmの幅で打ち上げられます。
オコシ:2km! 赤川でも700mだったのに、すごいスケールですね。ふつうに撮影したらカメラに収められませんよね。
安斎:斜めから撮影ましたが、正面からではもちろん収まりきりませんね。
たまたまフェニックスの全景を収められる席に当たり、とてもラッキーでした。ちなみに、長岡花火の有料観覧席は一部を除き、全席抽選販売です。
オコシ:花火は、お金を払ってよい席で観るべきだと、安斎さんは常々おっしゃっています。
安斎:有料観覧席は最高に美しい花火を堪能できる配置になっています。やはり最高のビューポイントであることは間違いありません。
このプログラム終盤には、夜空に羽ばたく「フェニックス(不死鳥)」が登場。まさに復興への力強い一歩を象徴しています。
この「フェニックス花火」は、長岡花火の代名詞といってもよいプログラムです。何度見ても感動させられます。
「復興祈願花火」であることを意識して観ると、まったく違う気持ちになるかと思います。
花火は冬こそ美しい!!
オコシ:ありがとうございます。どの映像も、たっぷり楽しませていただきました。でも、こうして観ていると、やっぱり実物の花火が観たくなります。冬に開催される花火大会もありますが、夏まで待ったほうがよいでしょうか?
安斎:いいえ、そんなことはありませんよ。スケール感では夏場の花火にはかないませんが、冬にもよい花火大会があります。
これから開催される冬花火でオススメなのが、12月24日のクリスマスイヴに、愛知県名古屋市の名古屋港で開催される「ISOGAI花火劇場 in 名古屋」です。
打ち上げは日本を代表する花火製造・演出会社の磯谷煙火店さんが担当します。内閣総理大臣賞も受賞したことのある、有名煙火店です。
音楽と花火がハイレベルで融合した新感覚エンターテイメントに、期待しています。
また「ツインリンクもてぎ 花火の祭典「冬」」もオススメできます。毎年大晦日に開催される「日本一開催の遅い花火大会」です。
群馬県の有名花火師・菊屋小幡花火店さんが打ち上げを担当します。
この花火の見どころは、菊屋小幡花火店さんならではの「音と光のコラボレーション」ですが、直径約60cmの大玉花火「正二尺玉」の打ち上げもあります。
ツインリンクもてぎのサーキット内で打ち上げるという、独特の会場雰囲気も◎です!
日本の秋から冬は湿度が低く乾燥しているため、花火の星(光)がクッキリ」と見えます。ちなみに、さらに追い風(マニアの間では“神風”とも)の条件が重なると、より一層きれいな花火を堪能することができます。
「花火は夏の風物詩」という感覚が根強い日本ですが、気象条件から考えれば冬花火のほうがきれいなんですよね。
既成概念にとらわれず、ぜひ秋や冬の花火もご覧になってみてください!
●安斎幸裕さん
花火愛好家
2011年より「ph0enix2011(Hanavideo)」のアカウント名にて活動中
ph0enix2011
YouTubeチャンネル:Hanavideo(ハナビデオ)
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ブログ:お役立ち情報ブログ Hanavideo
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画像提供:orangealice100