先日、日本のロケットが、カナダの商業衛星の打ち上げに成功しました。小惑星探査機の「はやぶさ」が帰還したり宇宙飛行士の油井亀美也さんが宇宙ステーションに長期滞在したりと、ここ数年、日本の宇宙開発に関するニュースが多いですね。
昨年には、「宇宙庁」が2017年に設立か! という報道がありました(2014年MSN産経ニュース『「宇宙庁」3年後めどに設置 NSCで宇宙戦略策定を 自民提言案判明』)。
10月に「庶民派な人工衛星プロジェクトが日大理工船橋キャンパスから」の取材を行った3分休憩、この動きを知って少し詳しく調べてみました。すると、この宇宙庁構想は、そもそも船橋出身で元総理大臣の野田よしひこ衆議院議員を中心に、提案されたらしいと判明。野田さんに取材をお願いし、日本の宇宙の未来を聞いてきました。
?3分休憩:宇宙庁の発想は、どのように生まれたのですか?
野田:発端は民主党が政権をとる前のことです。私が座長となり、「もっと宇宙を利活用すべきだ」と考える民主党、自民党、公明党の有志でプロジェクトチームをつくりました。議員立法で「宇宙基本法」(2008年成立)という法律をまとめました。
日本の宇宙開発は、文科省、国交省や総務省などが、各省別にロケットや衛星の開発を進めていました。そうではなく、1つの司令塔の下で取り組むべきではないかと。そのための法律です。
宇宙開発を国家戦略に位置づけて、そのために戦略本部をつくり、いずれは宇宙庁というひとつの行政組織を中心に統合していくと。宇宙戦略本部は私が総理の時に発足しています。政権は交代しましたが、大きな方向性は変わっていないと思います。
3分休憩:宇宙庁ができると、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?
野田:日本の宇宙開発が縦割りであったのは申し上げた通りです。国交省が気象衛星、総務省は通信衛星、とそれぞれが専門領域を掘り下げていました。
中でも、大きな存在感があったのは文科省が管轄するJAXA(宇宙航空研究開発機構)です。JAXAは学術的研究が主な役割ですが、それだけでなく、宇宙開発の技術やそこで得た知見を、私たちの生活が便利になるよう、実用的に利用・活用できないかと考えました。
端的な例で言えば、GPSは、われわれの生活を大きく変えましたね。あんなふうに、宇宙をもっと身近な生活に生かしていこうと。
?3分休憩:宇宙が身近になればビジネスでも大きなイノベーションが生まれそうですね。
野田:ロボットの分野では、大学や高専が参加する競技会があります。「おもしろい」と思って見ていますが、ああした取り組みでロボットに携わる人のすそ野が広がり、産業が支えられています。宇宙でも似たようなことが言えると思うのです。
たとえば、小型の衛星をひとつのロケットにいくつも積んで、一緒に宇宙へ打ち上げるプロジェクトが既に存在します。大学や高専、町工場も、衛星を作っていますが、もっと参入しやすくなり、携わる人たちが増えれば、生活を豊かにする技術や製品に還元されるはずです。
どんな分野で何が起こるかはわかりませんが、アイデアを持っている人はたくさんいます。宇宙庁が司令塔になって国策として進めることで、その人たちのチャンスをつくりやすくなるのです。
3分休憩:技術的には日本の宇宙開発は進んでいるのでしょうか?
野田:種子島にロケットの射場を持ち、10年以上打ち上げには失敗していません。技術は世界の中でもトップクラスでしょう。国際協力の中で、間違いなく優秀な宇宙飛行士も育っています。潜在的には、日本は宇宙先進国なのだと思います。
日本の国土面積は世界で61番目、とても小さな国です。しかし、上に目線を上げれば、宇宙という大きなフロンティアが広がっています。フロンティアをどんどん開発して、「地球の息づかいを感じられる国」になるのは、我が国にとって素晴らしいことです。
宇宙だけでなく、日本の周辺には「海」というフロンティアも広がっていますね。
3分休憩:宇宙と同じ様に、海も大切なフロンティアであると
野田:日本国内には、島がいくつあると思いますか?
正解はおよそ6800です。この島々を基点に、日本で管理できる海のスペースが決まってきます(排他的経済水域)。
そこで大事なのは離島です。2009年、財務副大臣の時に、沖ノ鳥島、南鳥島の護岸整備事業に予算をつけました。満潮のときにも沈まないので立派な島ではあるのですが、それをもっと島らしくしようと。
?現在、日本が管理できる海の広さは世界で6番目、体積では4番目です。
ご存じのように、日本近海には大量のメタンハイドレードが埋蔵していると言われます。レアアース、レアメタルといった、ハイテク産業に欠かせない鉱物も豊富です。これは、まさに国益であり、守るべき資源です。日本の海は、宝の山だと言えます。
だからこそ、近隣の国も海に関心を持ち、ハレーションも起こります。国策として、海をきちっと管理することが大事なのです。そのために総合海洋政策本部という組織が設置されています。
?3分休憩:ありがとうございました。最後に、地元の船橋とはどんな町だと、お感じになっていますか?
?野田:さまざまな意味でバランスが取れていますね。農業では、梨やニンジンの地域ブランドができました。全国に売りに出せる魅力的な農産品があります。
海には江戸前の漁業があり、鰯やスズキ、海苔やアサリ、最近ではホンビノス貝ですね。美味しいものがとれるし、鉄道は9路線35駅もあって利便性もいい。すばらしいベッドタウンだと思いますよ。だからまだ人口が減らないんです。
?問題は、「最後まで船橋に住んでよかったね」と思ってもらえるかどうか。特に、社会保障が充実してくると、もっとすばらしい町になると思います。
衆議院議員 野田よしひこさん
頭上の書は、野田さんが総理就任時に細川護煕元総理から贈られたもので、「経國」と書いてあるそう。
意味は国家を経営すること、国を治めること。