蚊を媒介としたデング熱の流行はまだ記憶に新しい出来事ですが、デング熱だけでなくブラジルなどの中南米で大流行したというジカ熱もまた蚊を媒介とした感染症です。
蚊の活動が活発となるこれからの季節、蚊を媒介とする感染症を予防するにはどうしたら良いでしょうか?
目次
デング熱・ジカ熱 蚊が媒介する感染症とは?
蚊に刺される事により病気になる事を「蚊媒介感染症」と言います。デング熱やジカ熱は日本ではあまり耳慣れない病気の名前でしたが、世界的に見ると蚊を媒介とした感染症は熱帯や亜熱帯地域で多く発生しています。
戦後、帰還兵が持ち帰った「マラリア熱」もまた蚊を媒介とした感染症の一種です。蚊媒介の感染症の一部で、四類感染症の対象となっているは6疾患で、特に日本人に影響しそうな疾患は以下の2つです。
デング熱
ネッタイシマカやヒトスジシマカなどが「人→蚊→人」という経路で感染させるデング熱は、2014年の8月、70年ぶりに感染が確認されました。
実はデング熱もマラリアと同様、戦後の帰還兵が持ち帰った影響で発生していた感染症で、日本に昔から存在するものではありませんでした。2015年に感染の報告はなかったものの、デング熱は東南アジアなどで50年ぶりに大流行しており、再び日本に入ってきても不思議ではない状態となっています。
デング熱の潜伏期間は2~15日(多くは3~7日)で発熱からはじまり、頭痛、眼窩痛(がんかつう)、筋肉痛、関節痛などの症状があります。非致死性の熱性疾患であるデング熱と、重症型のデング出血熱やデングショック症候群などの病態が確認されています。
ジカウイスル感染症(ジカ熱)
2016年に入って話題となっている「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」は中南米やカリブ海地域、オセアニア太平洋諸島、アフリカの一部(カーボベルデ)、タイなどで感染が確認されています。
ネッタイシマカやヒトスジシマカなどが「人→蚊→人」のルートで感染を引き起こします。日本国内での感染例は認められていませんが、日本国外で感染して帰国後発症した例があります。
ジカ熱は日本人がよく渡航するタイ・フィリピン・ベトナムなどで大流行していますので、感染の可能性がないとも言い切れません。
ジカウイルスに感染するとギランバレー症候群にかかる恐れがあると
言われています。また、妊婦が感染すると胎児に影響を及ぼし、小頭症や先天性の障害を引き起こす可能性があるので、より一層の注意が必要となります。
蚊が媒介する感染症の疑いがあったらどう行動すべきか?
マラリアには抗マラリア薬などの予防薬がありますが、ジカウイルス感染熱、デング熱は対処療法しかありません。
渡航先で蚊に刺された後体調が悪くなった、風邪とは違う症状が続くなど、何らかの異変を感じたらすぐに受診し、医師の診断を仰いで下さい。
蚊に刺されないためにはどうしたらよいか
デング熱やジカ熱などの予防策はとにかく「蚊に刺されない事」です。
流行地域へ旅行へ行く際は、肌の露出を避ける服装をする、虫よけスプレーなどで対策するなどの出来うる限りの防衛策を取りましょう。
妊婦や妊娠の可能性がある人は、流行地域への旅行は取りやめるなど特に予防に注意を払ってください。日本でも気候次第ではデングウイルスやジカウイルスを抱えた蚊が発生しないとも限りません。
現在、各自治体では蚊の発生源である水たまりをなくす対策を呼び掛けています。蚊の幼虫(ボウフラ)が発生しないように古いバケツなどの水がたまった容器、ポイ捨てされた空き缶、放置された子供の遊具、園芸用の植木鉢の受け皿、庭の組み置き水などを除去するように心がけるなど、身近なところでの対策も効果があります。