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【動画あり】花火嫌いをマニアに変えた衝撃とは~花火愛好家・安斎幸裕さんインタビュー~

船橋の自宅から各地の花火大会に出かけては、映像を撮り続けている安斎幸裕さん。迫力と感動を伝える動画を、YouTubeチャンネルHanavideo(ハナビデオ)に公開しています。
お気に入り花火大会から、いま大注目の花火師さん、ユニークな花火の楽しみ方まで、マニアトークを伺いました。

※記事中の動画、画像はすべて安斎さんの撮影です

Q.安斎さんは、年に何カ所くらいの花火大会に出かけられるのですか? どんな場所でご覧になるかも教えてください。

A.
多いときで年に20カ所くらい行きます。
長岡、大曲、土浦で開催される日本三大花火をはじめ、赤川、須賀川、成田など、東日本中心に大小さまざまな花火大会に出向きます。

現地では、基本的に有料観覧席で観ます。やはり、間近で大迫力の花火を楽しみたいですからね。それに運営側だってお金がかかっているのですから、対価はきちんと払って最高のものを見せていただく。

そこをケチって(無料席)は、感動も半減してしまいますよね。まあ、旅費もあるので、金銭的にはかなり大変ですけれど(笑)

花火大会の記念のアイテム、と観覧用のカードを見せてくれるあたりが渋い! マニアのこだわりトークに期待が高まります

Q.そんな安斎さんが特におすすめする花火大会は?

A.
先ほど触れたとおり、日本三大花火と言われるのが、「長岡まつり大花火大会」(新潟県長岡市)、「大曲の花火」(秋田県大仙市)、「土浦全国花火競技大会」(茨城県土浦市)です。もちろんすべて観ていますが、私が好きなのはダントツで「長岡まつり大花火大会」ですね。

大曲と土浦は、花火師さんの「競技大会」なんです。通称「尺玉」(直径:約30cm・開花幅:約300mの大玉)と呼ばれる大玉の単発打ち、通称「デザイン花火」「創造花火」と呼ばれる音楽に合わせたスターマインを交互に打ち上げて、花火師さんたちが自慢の技を競い合います。時折スポンサーが提供する大規模なプログラムが入ってきます。

ところが、長岡はそれら「競技大会」とは違った「慰霊・鎮魂の花火大会」。地元各社の協賛で成り立っており、協賛各社が予算を出しあい、2日間で計約2万発の花火を打ち上げます。協賛各社は「長岡愛」が非常に強いため、協賛金の額も「すごい」の一言。そして一つひとつのプログラムがとにかく派手なのです。中規模大会ならフィナーレ級のプログラムが毎回打ち上がる感じで、オープニングからフィナーレまで目が離せません!

●中越地震の復興を祈願した「フェニックス花火」
じっくり観たい方は、【5.1chサラウンド】長岡花火2015 フェニックス復興祈願花火(8月2日)

●NHK大河ドラマを記念しプログラム化された「天地人花火」
じっくり観たい方は、[5.1chサラウンド]長岡花火2015 天地人花火(8月3日)

そして、長岡の代名詞「正三尺玉(直径:約90cm・開花幅:約600m)」なども、長岡花火の人気プログラムです。

Q.安斎さんが、「ここの花火は観とけ!」という花火師さん(会社)、あるいは花火大会は?

A.
NO.1花火師という意味なら、マニアの誰に聞いても同じでしょう。茨城の「野村花火工業」さんですね。大曲や土浦の花火競技大会で、栄誉ある内閣総理大臣賞を何度も受賞しています。

気鋭の花火師さんという意味では、長野県の「伊那火工堀内煙火店」さんに注目しています。伊那火工堀内煙火店さんの花火を初めてみたのは、山形県鶴岡市の「赤川花火大会」ですが、とにかくそのアグレッシブ感と音楽に完璧にシンクロした精度の高い花火には、心打たれるものがありました。

[HDサラウンド]赤川(鶴岡)花火2015 オープニングスターマイン「Dance Dance Dance」(高音質を楽しむためにヘッドフォンの着用をおすすめします)

花火大会で言うと、千葉県成田市の「NARITA花火大会in印旛沼」が一般・マニア問わず楽しめる内容となっています。今年は10回目の記念大会でテレビでも放映された影響か、超満員のもとの開催となりました。

今年の新企画、お菓子メーカーの明治産業とコラボした企画は斬新でしたね。口の中でキャンデーがはじける「パチパチパニック」というお菓子を、花火が上がるタイミングに合わせて食べる、というもの。正直はじめは「ん?」と思いましたが、実際現場でやってみると、口の中ではじけるパチパチ感に合わせ、なんと花火もパチパチパチ(笑)。「なるほど」と、妙に納得させられました。

また、30mのクレーンに花火をつり下げるというアバンギャルドな試みも。「花火タワー」と題し、クレーンに設置された花火が地面に向かって「打ち下げ」られたり、横に飛んでいったりするわけです。

前半に画面下で爆発しているのが花火タワー。じっくり観たい方は、成田花火大会2015 10周年特別プログラム 花火進化論~今、その封印を解く!~

また、「花火 de BINGO!」は、打ち上がる花火の型に合わせビンゴシートを抜いていき、見事一列そろうと景品がもらえるなど、面白い試みも。

最後は、「NARITA黄金伝説」という、成田花火の代名詞のプログラム。会場を包み込むように花火筒が配置され、約10分間もの壮大なプログラムで幕を閉じます。オープニングからフィナーレまで飽きの来ない、構成がうまい花火大会ではないかと。千葉県民なら一度は行ってみるべき花火大会です。

よい感じで進化を遂げているのが、「こうのす花火大会」(埼玉県鴻巣市)。「燃えよ! 商工会青年部!!」という副題がついているのですが、とにかく実行委員会がアツいんです。

新潟県小千谷市の「片貝まつり」で打ち上げられ、世界一大きな花火としてギネス認定されている正四尺玉(直径:約120cm・重さ:約420kg・開花幅:約800m)に追いつけ追い越せと、2013年、鴻巣でも同じ正四尺玉を打ち上げました。他にも尺玉300連発という大規模なプログラムもあります。尺玉は、1発あたり約6万円前後しますので、この尺玉を300連発上げるとなると、それだけで約1800万円もの予算が必要となります。

ゆっくり観たい方は、「こうのす花火大会2013 グランドフィナーレ”鳳凰乱舞” 「ギネス認定!世界一の花火玉・正四尺玉&正三尺玉&尺玉300連発」 アルプス煙火工業

この実行委員の熱き魂はどこまで進化するのか、そのうち、五尺玉や尺玉500連発など、度肝を抜く花火を打ち上げてくれるのではないかと、個人的に密かに期待しています。

Q.安斎さんは、どうしてそんなに花火にのめり込むことになったのでしょう?

A.
元々、私は花火が嫌いだったんですよ。人は多いし、遠くからだと小さくしか見えないし。たまたま妻が好きで、それとなく一緒に観に行っていたんです。でも、福島県の「須賀川市釈迦堂川花火大会」で、初めて有料席に入り、間近で尺玉を体験しました。

尺玉ともなれば、上空300mまで上がり、花火の直径も300mに達します。それがもう、手が届きそうなところで開きます。全身で感じる衝撃!! 光はもちろん、風圧も感じますし、耳が割れるんじゃないかというくらいの音です。これを体感して、私のなかのスイッチが入ってしまいました。

安斎さんが手に持っているのが2.5号玉の模型。尺玉(10号玉)になると、この4倍もの大きさに(直径約30cm)

私が花火にはまったのは2011年です。東日本大震災で気持ちが落ち込んでいたところ、間近で花火を観て心打たれた、というのもひとつの理由かもしれません。

Q.花火を動画で残そうと思ったのはなぜですか?

A.
人って見たモノ、聞いたコトをいつか忘れてしまいますよね。単純に忘れないように、花火の感動を残しておきたかったのです。そりゃあ、年に1回の花火なら忘れないかもしれませんよ。

でも、私の場合、毎週のように花火を観ているわけなので。今週の感動に、来週の感動が上書きされて、せっかくの記憶もだんだんと薄れていまします。

花火の動画をYouTubeでアップもしていますが、主目的は人に見せるというより、自分の想い出を残すことですね。


安斎さんが運営するYouTubeチャンネル「Hanavideo(ハナビデオ)」。200本以上の花火動画を掲載

あとは、花火大会の前には、予習もしなきゃいけませんからね。過去の花火大会を見直して、そのプログラムはどこから打ち上がったのか? 「去年は右から上がっているな。ならば、今年も右から上げる可能性が高いぞ」と。そういうチェックをしないと撮影本番にはのぞめないですね。

Q.そうはいっても、映像と間近で観るのとは全然違いますよね?

A.
そうですね。だから、私の花火の楽しみ方は一般の方とはかなり違うと思います。「楽しんで観なきゃ損じゃん」なんてよく言われますが、私にしてみれば、すばらしい音と光を動画撮影せずに帰ってくる方が損かな、と思っています。せっかくの感動を心にもカメラにも(笑)

花火大会といえば、屋台で買い物なんかして、お酒を飲んだり焼きそば食べたりしながら観るのが楽しみでもありますよね。せっかく友人・家族・カップルで行くのですから、皆で楽しまないと損です。でも、私は花火大会の現場で、お酒をほとんど飲みません。そりゃ飲みたいですよ、私だってお酒は大好きですから。でも、真剣に撮影するために我慢します。酔って手ブレしては台無しですからね(笑)

花火会場で我慢する代わりに、急いで家に帰って、その日のうちに撮影した映像を見るのが私の楽しみなのです! もう、心臓がバクバクしますね。きれいに撮れているか、というのもありますし、大会の余韻に浸りながら、つい先ほどの感動をもう一度振り返るわけです。

大画面のテレビ&5.1chホームシアターシステムで、大好きなお酒を飲みながら迫力の映像と大音響を、じっくりと、ひとりきりで……。

Q.花火映像フェチの安斎さんにお聞きします。撮影にこだわりはありますか?

A.
私が花火撮影する際は、一般に売られているHDビデオカメラを使用しています。機種は「CANON iVIS HF G10」です。このカメラはノイズが出にくく色合いも鮮明で、まさに花火撮影にピッタリといえます。でも、正直どんなカメラでも、今のカメラは性能が良いので、カメラの知識が無くても、そこそこきれいに撮影できてしまいます。なかには「花火モード」なんて便利な機能もありますし、素人さんでも手軽に花火撮影が楽しめます。

しかし、「花火の音」はなかなかうまくは録れないのです。なぜなら花火は「爆発音」だからです。私は「花火会場の音を忠実に、リアルに録音すること」に、特にこだわりをもっています。

花火が破裂した音は、ビデオカメラ内臓のマイクで普通に録音すると、バリバリと割れてしまいます。花火が筒から「ボンッ」と上がって、夜空で「バンッ」と開く。この2つの音を、ノイズが入らないよう、忠実にとらえることに苦心しました。

また、最近は音楽に合わせた打ち上げも多いですね。しかし、花火の破裂音が邪魔をして、音楽を明瞭にとらえることも内蔵マイクでは難しいのです(音割れを防ぐ機能が働き、花火が破裂した瞬間、録音レベルを自動的に絞ってしまうため)。

RODE社の指向性マイクをビデオカメラに付けて録音しています。また音声のみRoland社のリニアPCレコーダー(音声データを圧縮せず、高音質のまま記録できるレコーディング機材)を使用し録音しています。動画サイトにアップする際は、このレコーダーで録音した音声を映像にミックスさせアップしています(ミックスせずにアップしているものもあります)。

専用の音響機器を使用することにより、花火の音と音楽をとてもクリアに録音することに成功しました。ドーンという花火が開く時のリアルな重低音も再現できています。花火仲間からも、「安斎さんの音は日本一迫力のある音だよ」そう言っていただく機会もかなり増えました。

私の花火動画をご覧いただく際はぜひ、ヘッドホンやサラウンドシステムなど、低音(音域)が豊かに再現できる環境下でお楽しみいただければ幸いです。

Q.ご家族は……なんとおっしゃっていますか?

A.
ご想像の通り、妻はあきれていますよ(笑) あきれていながらも私の「花火に対する情熱」を、誰よりも理解してくれています。いや、しているはずです。良き理解者ですね、多分……(笑)

3歳の娘も、もう花火に慣れていますね。お腹にいる頃からあちこち連れて行っていますから、あの花火の大音響の中で平気で眠ったりします。

娘には花火を好きでいてほしいとは思っていますが、マニアにはなってほしくないですね。一緒にカメラ構えたりする夢は持っていません。ただ「お父さんが撮影した花火映像見たい!」そう言ってもらえる夢は持っています(笑)

●安斎幸裕さん
花火愛好家
2011年より「ph0enix2011(Hanavideo)」のアカウント名にて活動中
ph0enix2011
YouTubeチャンネル:Hanavideo(ハナビデオ) 
ブログ:お役立ち情報ブログ Hanavideo 
Twitter: https://twitter.com/Hanavideo
Facebook: https://www.facebook.com/ph0enix2011

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