【こんなところに凄い人】ガラス工芸家・ノグチミエコ

【こんなところに凄い人】ガラス工芸家・ノグチミエコ

こんにちわ、「戦う個人事業主」澤田真一です。

さて早速ですが、日本には「ものすごい職人さん」がたくさんいます。もっとも、ひとくちに「職人」といってもそのジャンルは様々ですが、今回はとある工芸作家さんに焦点を当てたいと思います。

その作家さんの名は、ノグチミエコ。日本を代表するガラス工芸家の先生です。今回、澤田はノグチ先生とインドネシアのジャカルタでお会いしました。

どうしてジャカルタかって? それはまあ、おいおい説明するとして。

ガラス工芸というと、我々一般人のイメージは「長い筒に息を吹きかけながらクルクル回す」というものです。それは間違っていないのですが、いざ間近で作品を見てみると「ホントにこれはガラスか!?」と思わせるような重厚さを帯びています。

それはまさに、「手のひらサイズの異空間」です。

目次

宇宙をガラスに閉じ込める

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ノグチ先生は毎年、ジャカルタで展示即売会を開催しています。

澤田が初めてノグチセンセイの展示会を取材したのは、今から2年前のこと。正直言ってしまうと、この時の取材はあくまでも同時開催されていたジャカルタ日本祭りがメインで、ノグチ先生の展示会は前座に過ぎませんでした。ですからその後に澤田が手がけた記事も、そのような配分で書きました。

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ですが、本当のところは記事を書きながらもノグチ先生のガラス工芸のことを考えていました。私にとってそれは、小学生の頃に初めて見た鶴田一郎先生の絵に匹敵するほどのインパクトだったからです。

ノグチ先生は、その作品の中に「宇宙」を閉じ込めてしまいます。決して誇張ではありません。本当に「宇宙」です。

そのブラックホールの中に吸い込まれたら最後、どんな人でも脱出できません。

インドネシアの障害者福祉

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ノグチ先生は、現地で福祉事業を行っています。

ボゴールに『インドリヤ』という、発達障害の子供たちの施設があります。ノグチ先生は作品制作の過程で出たガラスの切れ端を、インドリヤに提供しています。それを子供たちがリサイクルして新たな作品に加工し、展示会で販売するというわけです。

インドネシアは、発達障害や知的傷害を持った人に対する支援が不十分と言われています。いや、それどころか農村部では未だに「障害者は悪霊に祟られている」という考えもあり、彼らを鎖で拘束するということも行われています。

それはあたかも、現代のアウシュビッツです。「pasung」という単語の意味は、すでに日本のメディアにも取り上げられています。興味があったらググッてみてください。

そもそも、この国には障害者を対象にした支援施設が数えるほどしかありません。しかもそのすべてが、入所者の人権を完全保証しているわけでもないのです。

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ですがもちろん、インドリヤには鎖も檻も鉄のボールもありません。その代わり、絵筆と絵の具があります。ノグチ先生曰く、施設内で直接ガラス工芸作品を制作できるようにしたいとのことです。

数十年先を見つめる

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ともかく私は、ジャカルタでの展示会を3年連続で取材しました。

webライターというのは、記事の企画を自分で提案する場合がほとんどです。各メディアが何を求めているのかを自身が判断し、「このネタどうでしょう」と売り込む。それがボツになったら、また別のネタを持ってきます。物書きの仕事は、そんなことの繰り返しです。

ですから、新しくて面白いネタがあれば真っ先にそれを優先します。同じ企画を毎年追いかけている、という例はあまりありません。

ただ、澤田の目から見てノグチ先生の活動は、言わば「大河ドラマ型」です。豊臣秀吉の生涯が2時間ドラマなどでは収まらないように、このネタも複数年に渡り取り上げる価値があると澤田は考えています。

そもそも福祉事業というのは、一晩二晩で開花するものではありません。インドリヤの子供たちの誰かが、将来ノグチ先生みたいなアーティストになったとします。するとその「将来」とは、どんなに低く見積もっても20年後です。この国の政府は、どうも劇的なやり方で劇的な効果を狙おうとしますが、教育と福祉に関してはそうした手段は不可能と言っていいでしょう。

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結局、この問題について本気で取り組もうと思ったら、ノグチ先生がすでにやっているような方法しか他にないわけです。

ガラスの中の宇宙は、数十年後の未来までも映し出しているようです。

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