あの懐かしのファミコン『たけしの挑戦状』をユネスコ記憶遺産に推薦しよう!

こんにちは、「戦う青色申告者」澤田真一です。

今回は「ユネスコ記憶遺産」についてのお話です。

これは絵画や文書などの可動文化財を対象にした国連の文化保存事業で、たとえばベートーベンの第九の楽譜やバイユーのタペストリーなんかが登録されています。日本からも山本作兵衛の筑豊炭鉱図や支倉常長の慶長使節に関する資料が記憶遺産になっていたりします。

で、澤田は最近つくづく思うわけですよ。こういうのって、真っ当な推薦理由をこじつければ案外あっさりと記憶遺産に認定してくれるんじゃないかって。その上日本は古くから文字文化が栄えた国ですから、歴史的資料には事欠きません。

それじゃあってんで、私からぜひ国を挙げて記憶遺産に推薦してもらいたい逸品をここで披露します。

それはファミコンソフト『たけしの挑戦状』。そう、あの伝説のクソゲーです。

なぜ『たけ挑』か?

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テレビが近代史に多大な影響をもたらしたということは、誰にも否定できないでしょう。

そしてそのテレビを使って遊ぶコンピューターゲームもまた、人類の文化史に大きく食い込んでいます。

問題はそのコンピューターゲームの成り立ちです。初期のゲームは『スペースインベーダー』のような「ひたすら点数を稼ぐ」という類のものでした。そこにストーリー性はまったくありません。やがてゲーム機が小型化し、家庭で楽しめるようになると『スーパーマリオブラザーズ』のような「ステージをやり込むゲーム」が現れます。

ただし、コンピューターゲームが文化的な道具になり得るにはそれでも不十分です。紫式部の『源氏物語』がなぜ「近代小説の先駆け」と言われているか? それは登場人物の心理描写があるからです。

中国の『西遊記』や『水滸伝』も小説ですが、これらが「近代小説」と言われることはありません。「孫悟空が如意棒で悪い奴を打ち負かして万々歳」という「キャラクターの行動」しか書いてないからです。

登場キャラの細かな心理をどこかで表現する。それをしてこそ、小説は人間文化に欠かせないものとなったのです。

よく考えたら、コンピューターゲーム史上そうした心理描写を本格的に行ったのは『たけ挑』が初めてではないでしょうか。

確かにハードの性能の限界から様々な欠陥はあるものの、このソフトは「近代ゲームの先駆け」と言えるのです。

ゲームとストーリー性

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『たけ挑』のストーリーは、以下の通りです

主人公は名もなき一介のサラリーマン。安月給に甘んじ、家に帰っても奥さんと息子に張り倒されるという毎日。ただただストレスを蓄積させるだけの日常から逃れるかのように、サラリーマンは酒を飲みカラオケで歌います。

ところがある日、いつものようにカラオケで熱唱しているとヤクザが因縁をつけてきました。その場で喧嘩になるも、サラリーマンはヤクザを全員殴り倒します。すると老人が近づいてきて、敬意の証にと宝の地図をくれます。

一念発起したサラリーマンは会社を辞め、冷たい奥さんとも離婚し、財宝を求め南の島に旅立った……というものです。

これだけの細やかなストーリーをファミコンソフトにしたという業績は、やはり無視できるものではありません。もちろん、今でこそゲームにストーリーがあるのは当たり前です。そのため『たけ挑』は「パイオニアの悲劇」に苛まれてしまった感があります。すなわち、「当たり前になった行為を最初にした者は忘れられる」という現象です。

ですが、いや、だからこそ我々日本人は、時代の先駆者となったこのソフトを永遠の記憶として留めておかなければならないのです。

意外なものが認定される

さらに、ユネスコ記憶遺産は「どうしてこんなものが認定されたの?」というものが度々出てきます。

中にはどう考えても政治的で、早急の再審査が必要な物件もありますが、それはさておき先述の筑豊炭鉱図も実は「全く意外な認定物件」でした。

そもそも筑豊炭鉱図は、世界遺産に炭鉱施設を推薦するための一資料に過ぎませんでした。ところが海外の審査員から「いっそ炭鉱図を記憶遺産にしてみては?」と言われたそうです。なぜか?

炭鉱図を書いた山本作兵衛は、炭鉱員です。「そんなの当然じゃないか」と言われそうですが、当然ではありません。世界のどの国でも、炭鉱員が炭鉱の様子を解説付きの絵画資料として残すことはまずないからです。

そうしたことは普通、政府から派遣された役人か放浪画家が描きます。そもそも、「19世紀生まれの肉体労働者が文章を書ける」ということ自体が世界的に見れば驚きの現象なのです。

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ただ、日本人は「自分たちの長所」というものに鈍感な面がありますから、まさか筑豊炭鉱図が世界遺産級の資料だと長らく気づかなかったというわけです。

『たけ挑』にもそれが当てはまるのではないでしょうか。「ゲームにストーリー性を与える」ということを最初にやったのが日本人だとすれば、このソフトはその先陣を突っ切ったということになります。

我々は今一度、自分たちの築いてきた文化を見直さなくてはなりません。

以上が、『たけ挑』のユネスコ記憶遺産推薦に向けた文化的背景の解説です。……あ、やっぱダメ?